PMはどうやってプロジェクトを進める?コミュニケーション・チーミングの側面から解説してみた
データアナリティクス事業本部@札幌の佐藤です。 今回は私のプロジェクトで実際に活用している、プロジェクトマネジメントするうえでの、クライアントやプロジェクト内でのコミュニケーションについて記載したいと思います。 当活用にあたっては株式会社コパイロツトの方に相談させていただいたうえで、ルールとして運用しているものとなります。 ご協力いただきありがとうございます。 また、当記事の別側面としてコパイロツト様から見た視点でプロジェクトの進め方を記載しておりますので、併せて見ていただくと、このプロジェクトマネジメントをより深く知ることができるかと思います。
当記事はプロジェクトマネージャ向けの記事ではありますが、コミュニケーションの根本についてもお話ししていますので、エンジニアの人も良ければ読んでいただければと思っています。
そもそもプロジェクトマネジメントって何か
まず話の前段としてなぜプロジェクトマネジメントをする必要があるのかについて考えたいと思います。 PMBOKではプロジェクトマネジメントについて、「プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、スキル、ツール、及び技法をプロジェクト活動へ活用すること」と定義されています。 簡単に言うと、クライアントが満足するものを提供するために、制約の中でプロジェクト運営を行うことと言えます。 なお、制約というのは、品質(Quality)・コスト(Cost)・納期(Delivery)の3つを指します。 これはプロジェクトという言葉が、「所産を創造するために実施する有期性のある業務」という、ある一定の期間で成果物を提示するという点からも分かるように、原則この制約の中である一定の成果を出していく必要があります。
プロジェクト(英: project)は、何らかの目標を達成するための計画を指す。基本的に集団で大がかりに実行するものを指す。 プロジェクトマネジメント協会が制定しているPMBOK(第5版)の定義では、「プロジェクトとは、独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務」とされている。 プロジェクト
ここまでがよくあるプロジェクトマネジメントに関する情報かなと思います。 ただ、上を読んだうえでプロジェクトマネジメントをどのように実施するのがいいのか、あまり分からないのが事実であると考えます。
そもそも何をマネジメントするのか
「プロジェクトの要求事項を満足させる」というのは、具体的に指す(何をマネジメントする)のでしょうか。 プロジェクトマネージャとして、PMBOKを理解していくにあたって、具体的には下記を指すのではないかと考えています。 マネジメントは大きく2種類あるのではないかと考えています。
- 人間系のマネジメント
- 技術系のマネジメント
人間系のマネジメントは、プロジェクト内部及び、クライアントとのコミュニケーションやチーミングなど、円滑な人間関係を構築するという側面、マネジメントの技術は、プロジェクトを円滑に進めるための技術という側面です。 この2者が不足していると仮定した場合、どちらを学ぶべきかというとそれは人間系のマネジメントではないかと思います。 仮に制約面が不足していると仮定した場合、マネジメントの技術は後天的に学び改善することが可能な観点も多いかと思います。 ただ、人間系のマネジメントはそうはいかず、一度崩れてしまうと復旧が難しく、最悪プロジェクト終了などもありうるところでもあります。 そして、大体プロジェクトで悩まされることが多いのは人間に関するところが多いというのも事実です。
そもそも自分はどこまでマネジメントできるのか
私はプロジェクトマネージャではありますが、熟練したプロジェクトマネージャかという質問にはまだまだそこまで到達していないと思っています。 ですが、様々なプロジェクトをマネジメントし、色々課題に遭遇する中で、マネージャのレベルにも濃淡があるのではと考えました。(当たり前の話ではありますが) エンジニアの初学者にはマイクロマネジメントが必要なように、プロジェクトマネージャについても最初からすべてできるわけではありません。 ここでは大きく3つのレベルに分けています。 今後はこの3点を前提として、どのようにコミュニケーションをするのがよいのか記載を進めていきます。
- 新人プロジェクトマネージャ
- 中級プロジェクトマネージャ
- ベテランプロジェクトマネージャ
新人プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャになり始めの人に該当します。 このレベルの人は、自分の中での回答がないこともあり、ひとつひとつの作業に右往左往することになります。 そのため、プロジェクトの舵取りが、とにかく「ゴールにたどり着くかどうか」になると思います。 クライアントの提案について上手く捌いたり交渉する力がこの時点ではないかと思います。 とにかくプロジェクトメンバーに指示を与え・管理することを中心に、最悪は自身も作業者となり、適切にプロジェクトを終結に向かうことを目標にする立場になるかと思います。 ここのレベルは、右往左往してしまう状況から周囲のフォローアップが細かく必要になってくるレベルです。
中級プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャになり数年経過した人に該当します。 このレベルから交渉や、調整という観点を考えながら行動できるようになっていくのかなと考えています。 新人プロジェクトマネージャと比べ目先のことではなく、もう少し先のことが見えてくるようになってくる状態だと思います。 自身のプロジェクトの解像度が上がり、社内の他プロジェクトと比較したり、上司と調達交渉や調整という面からも円滑なプロジェクト運営という側面で視野をあげることができる状況かと思います。 ただ、経験数の不足から何か問題があった際に切り抜けることが難しいので、時折周囲のフォローアップが必要になってくるレベルです。
ベテランプロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャになり5年以上経過した人に該当します。 このレベルから、クライアントとの信頼関係をいかに構築するのか、自身のプロジェクトがクライアントの理想像に近づいているのかという点を、ある程度想像して行動ができる状態になるかと思います。 プロジェクトや、クライアントとの関係から将来を見越して行動が少しずつできてくるレベルかと思います。 このレベルはアドバイスなどのフォローアップを行うというよりも、どの様に考えているのかを聞く・意見をいうというフォローアップが必要になってくるレベルです。
クライアントとのコミュニケーション
そもそもクライアントと我々はどうタッグを組むべきなのか
クライアントとの関係は大きく下記2点の関係性で成り立っています。 発注者と受託者の関係であるのにもかかわらず、パートナーとして対等である、これは一見矛盾しているように見えます。 しかしこれは実際は矛盾していません。 なぜなら、この2点を書いているのかというと、「プロジェクトの成功=自身のプロジェクトがクライアントの理想像に近づいているのか」は、両者が共に存在できている状態で成り立つからです。 両者間に契約というものが存在しているのは当たり前の話だと思います。 プロジェクトとして、有期性の中で成果を出す必要があるのは、契約として期間があり、それに見合った金額が支払われているためです。 ただ、それだけの関係であるべきなのかというと、品質という側面ではノーと言えます。 ただの作業者として、クライアントのいわれたとおりに構築したものが本当に良いものなのでしょうか。 真にクライアントが求めているもの何かを理解・伝え、クライアント側も軌道修正を行いやすくなるより最初の目的や、依頼背景に近づくことができる。 よりよい価値を提供するには、パートナーとして対等であることが非常に重要であると考えます。
クライアントとどの様にコミュニケーションを取るべきなのか
プロジェクトマネージャがひとり立ちするにあたって避けて通れないものが「クライアントとのコミュニケーション」をいかに行うかであると考えます。 上でも書いていますが、クライアントとの関係の良し悪しにより、品質というものが左右されるケースがあるためです。 信頼関係を構築することにより、双方の不公平感を減らしていくことでより価値のある成果物を提供する可能性が高いです。 ただし、信頼は一朝一夕で何とかなるものではありません。 上で書いた状態は、業務を適切に遂行し、信頼貯金を貯めた先に存在しているものです。 いかに確実に信頼貯金を貯めていくのかというのが、円滑なプロジェクト推進のひとつのポイントであると思います。 具体的にどのようにとるべきなのかについては、各プロジェクトマネージャのレベルにもよって違います。
新人プロジェクトマネージャ
上のプロジェクトマネージャの状態でも書いていますが、新人プロジェクトマネージャはプロジェクトをゴールに到達させるのにパワーを使っている状況です。 そのため、視野を広くとるのが難しい状態かと思います。 その中で実施できるレベルだと下記を読み、どの様なことが想定されるだろうというのを想像してみることから始めてみるのがよいと思います。
- プロジェクト開始前にクライアントのサイトを読む(業務内容・体制図・IRなど)
- 外部公開されているニュースなどを調べて読んでみる
- RFPなどの提供資料と、クライアントが公開されているものを組み合わせてみる
中級プロジェクトマネージャ
少しずつ聞ける範囲のことを聞いてみることにチャレンジできる状態になっていると思います。 その中で信頼貯金を貯め始めたときに確認できそうなことを中心に確認してみるのが良いと思います。
- クライアント側が答えてくれそうなものを確認する(上司がいるのか・クライアント内部で承認等があるのか)
- クライアント側担当者の状況(周りの部署との関係)
ベテランプロジェクトマネージャ
会社内の色々な制約や、関連するクライアントの問題点などをヒアリングし、より理想に近づけるような状態を目指していける状態だと思います。 その中でクライアントや、担当者に寄り添った、共に同じ方向に向けるような状態になれるようなことを確認するのがよいかと思います。
- クライアント側が表に出していない社内の状態を確認する
- クライアント側担当者の心情など
プロジェクトメンバーとのコミュニケーション
プロジェクトメンバーとどう関係を作っていくのか
仕事をして行く中で一緒にいる時間が長いのは、プロジェクトメンバーです。 状況においては家族よりも一緒にいる時間が長い場合もあります。 そんな長い期間付き合っていく人間たちとどう付き合っていくのがよいのか、というのはプロジェクトマネージャを務める中で悩むことが多いと思います。 ではその中で、どのような関係性でいるのがよいのでしょうか。 上記でもあるように、最終的にあるべき状態として相互が信頼できる状態になっていることが理想です。 具体的には、下記3点である状態がよいと考えます。
- プロジェクト活動において心的負荷が高くない状態
- 相互が自分の役割を(支えはありながらも)自分の力でやり抜ける状態
- 相互が固定観念を持たずに、得意不得意を理解しあう状態
ではその状況をどう作り出していくのか。 私は関係性は相互で構築するものという前提の上、下記2点であると考えています
- 固定観念を捨てる
- コミュニケーションをじっくりととる 上記についてはもう少し詳細に記載していきたいと思います。
固定観念を捨てる
これは組織運営のひとつ「学習する組織」にも記載があるメンタルモデルのことを指します。
メンタルモデルは、外界の現実を仮説的に説明するべく構築された内的な記号または表現であり、認識と意思決定において重要な役割を果たす。メンタルモデルが構築されると、時間とエネルギーを節約する手段として慎重に考慮された分析を置換する。 単純な例として、「野生動物は危険だ」というメンタルモデルがあるとする。このメンタルモデルを保持する人は、野生動物に遭遇したとき反射的に逃げようとするだろう。これは自身のメンタルモデルを適用した結果であり、野生動物に対するメンタルモデルが形成されていない人や違うメンタルモデルを保持している人はこのような反応はしないと考えられる。 メンタルモデル
普段生活している中でも、我々はある程度の期待値も持って生活をしています。 自分の中での期待に対し上振れ・下振れを持って物事の決定・判断を行っています。 しかしその期待値は、果たして正常な決定や判断に寄与しているものでしょうか。 例えば、ある人の最初の下馬評が高かったと仮定して、それは本当に正しいのでしょうか。 また、誰かが言っている「この人はこういう人である」は本当に正しいのでしょうか。 このような勝手な思い込みによって、ギャップが生じたときに修正が困難なものになっていたり、体制を整えるのに時間がかかってしまいます。 ここからもわかるように、物事には基本的に固定観念があることを認識する必要があります。 それは自分だけではなく、相手も同様に固定観念(期待値)を持っています。 そのうえで、極力固定観念は捨て、適切な期待値を相互が持つような行動が必要になります。 私のプロジェクトでは、期待値を揃えるためにロールセッションを実施しています。 詳細なやり方については下記に記載しておりますので、併せて読んでいただけると幸いです。
コミュニケーションをじっくりととる
いい仕事をするにはいい関係性が必要となります。 いい関係性を作るにはコスパを求めるのはナンセンスであると考えます。 いいアーキテクチャを作るのは、質のいい会議が数回必要なように、人間関係も同様に会話が必要になります。 それはプロジェクトマネージャとメンバーの1on1での会話だけではなく、ひとりの人間として雑談をするという意味のなさそうなものも重要です。 1on1ひとつにとっても、そこに工数が発生するため無駄であるという感覚になるかもしれません。 チームを作るのは最初が肝心で、そこでいかに心的負荷が高くない状態を作り上げていくのかというのが、今後のプロジェクトとしての活動に影響あるものとなります。 必ずペイできる時が来ますので、まずは雑談でもよいのでスタートしてみるのが良いかと思います。 また、プロジェクトマネージャは状況を見渡す冷静さも必要ですが、気持ちを伝えるという感情も非常に重要だと思います。 人は最終的に気持ちに対して反応するものですので、それは意識して伝えたほうがよいです。 私が実施しているものとしては、まずプロジェクト開始時の内部キックオフ実施前後にメンバーと時間を取り1on1を実施するようにしています。 その場で話す内容は主に下記3点です。
- アサインされる案件が、この会社にとってどういうものであるのかを伝える
- 今持っている不安を聞く
- その人のプロジェクトの目標を一緒に考える
また、朝会でのコミュニケーションや、報告方法などを明確に定めていくことで、コミュニケーションをじっくりと取ることが可能であると考えています。
コミュニケーションを何回実施すべきなのか
最終的にあるべき状態に到達するまでに何回コミュニケーションをするべきなのか。 これは達成されるべき回数はありません。 そもそも1度のコミュニケーションで100点を取るような指針は取るべきではなく、10点でも良いためです。 コミュニケーションは年輪を作るものと同じです。 成長輪である年輪が増えるたびに木は太くなります。 木の幹の肥大成長が盛んな時期ゆっくりになる時期があるように、コミュニケーションも同様であると考えます。 ただし、漠然とコミュニケーションをとることで関係性がよくなるといえばNOです。 また、一度関係性ができたとなった場合であっても安住してはいけません。それは自分の思い込みである可能性があるからです。 私の中での内部コミュニケーションのレベルは下記図であるのではと考えています。 これは「7つの習慣」にもあるように信頼貯金をどう作っていくのかというものになります。 期待を揃えそれを超えていくことで信頼する(LV3へ上っていく)ことができ、その状態から山の裾野(LV1)を広げていくことで、LV3の質も向上するのではないかと考えています。 下記にもう少し詳細を記載します。
LV1.関係を作る
この時点では、自分たちが双方に何を期待しているのか・不安・スタンスなど相手を理解することを意識していきます。 これを実施することで最初によくある、互いのレベルがうまく測定できないことによる軋轢をある程度回避することができます。 ここで「ある程度」を記載したのは、「100%双方が理解しきれる状態」は期待しないほうがよいということを意味しています。 例えば1時間の初対面の人と会話を行った際に、相手のことをどの程度理解できるのかと考えたときにそれはものすごく限定的であると思います。 仲良くなっていくにあたって時間が手を貸してくれる段階があるように、LV1も時間が相互理解を進めてくれるのです。
LV2.期待に応える
この時点では、自分ができることを自分で探すことができる状態が理想です。 指示や支援を少しずつ少なくし、自分でボールを持ち、またはボールを拾い最後まで取り組んでいくことで、期待に応えていく形となります。 このレベルで少しずつではありますが、できることを増やしていく形とするのがよいと思います。 期待に応えられているのかどうかは、改めて相互に評価しあうことで現在位置を確認することができるので重要です。 この時点でLV1を改めて確認し、改めて期待値を揃えて山の頂上を目指していく形になります。
LV3.信頼ができる
この時点が山の頂上となります。 上でも書いたように、ここに到達したことで安心するのはよくないです。 ここの時点のLV1は、最初のLV1の時点とは違う、期待値・不安がある状態です。 また、最初の時点では関係性ができていなかったので言えなかったスタンスや、不安も話せる状態になっている可能性があります。 よりよい関係性の構築のためにも、ここで改めて1on1等を行い、更に信頼を今日このものにするのがよいと考えます。
さいごに
プロジェクトマネージャというのはどういう仕事なのでしょうか。 それは目的地に向かってみんなを導くのがその役割なのだと思います。 SHIROBAKO 第23話で丸山社長が木下監督に言った台詞
そこのたどり着ければいい仕事をしたという高揚感と満足と誇りが手に入るはずだ。 みんなそう信じて惜しみなく働いている。 人生の多くの時間を作品に捧げてる。 監督が目指す場所は最後に作っている人も見ている人も幸せになれる場所じゃないかな。
放送されていた2014年当時では分からなかったですが、今この言葉の意味が少しわかったような気がします。 この内容が困っている人の少しでも参考になれば嬉しいです。
上にも書いておりますが、この内容の別側面として株式会社コパイロツト様から見た視点でも掲載されていますので、併せて読んでいただけると、より理解が深まるかと思います。